「海外」を初めて見た外国人に東京を案内したら、全てが想像を超えていた話

台湾出身の両親、中国人の夫、中国ハーフの子供との東京生活

ある在日中国人の悩み「日本人は冷たい」とヒトの距離感

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「日本人は冷たい。」

 

日本のニュース番組で日本語を勉強してから来日し、東京に住んで3年半になる在日中国人のゴリくんには悩みがありました。

 

周囲のヒトとの距離感です。

 

 

私は大学でポスドクをしている。教授から4人もの学生の面倒を見るように言われ、研究指導をして来た。

日本人のポスドクたちは学生1人あたり1万円を貰っていたけど、私は何も貰えなかった。それでも、日本の優秀な若者の将来を考えて、全力で指導をした。

 

私はこんなに努力しているのに教授は私を評価せず、1人も学生を指導していない人に昇進の機会を与える。

私が困っているのを見ても、学生たちは面と向かって平然と言うんだ。それはあなたの問題だから自分とは関係ないです、ってね。

 

 

ゴリくんの話を聞いて、地下鉄の駅に貼ってあった海外ボランティア募集のポスターを思い出しました。 そこにも同じ一言が書いてありました。

 

「日本人は冷たい。」

 

私は、その言葉が頭を離れませんでした。

 

ゴリ君の「日本人は冷たい。」という感覚は、周囲の日本人がゴリくんと保っている一定の距離感から来ているようです。

 

そこで私は、目には見えない2つ距離感について、ゴリくんに手紙を書きました。

 

 1上下関係がもたらす距離感

日本の社会では、多くの場面で安定した上下関係が存在します。

年齢や経験値に基づいた要素が大きいため、上下の変動が少なく安定しています。そして、交わることのない上と下の間には距離感があります。

 

安定した上下関係は、子供たちが中学校に入学する頃から、より身近な存在になります。

 

私が中学校に入学してから大学を卒業するまでの間、同じ学年のみんなは互いを蹴落とすことなく、手を繋いで仲良く駆けっこをしてきました。

 

先輩は絶対的に「エライ」存在で私達と一定の距離があり、私達は先輩の言うことを聞くのが当たり前でした。

 

 

就活の段階になると企業は

「リーダーシップのある人」
「自分で考えて行動できる人」

を求めている、と口を揃えて言うようになります。

 

私は違和感を感じました。

「小学校から大学まで大人が求めることに全て従い、勉強や暗記を必死にしてきた。でも、リーダーシップを発揮したり自分で考えて行動したりすることが大事だとは、誰も子供たちに教えていなかった。」

 

社会人になり仕事をするようになるとすぐに、それが企業の建前であったことに気付きました。

 

まだまだ多くの企業は、本気で

「リーダーシップのある人」
「自分で考えて行動できる人」

を求めているわけではなかったのです。

 

上の人の方針に素直に従っていれば、上の人の意に沿った仕事をしていれば、年功序列に従いゆっくりと地位が上がっていく。上下関係が安定しているので、上下関係に伴うヒトとヒトの距離感も安定している。

 

ゴリくんはいわゆる「リーダーシップのある人」「自分で考えて行動できる人」です。

自分が正しいと思ったら、他の人と対立してでも貫きます。ゴリくんはそれが評価されるべきだと感じていますが、ゴリくんの努力の方向性は教授の人事評価の基準に合致しているのでしょうか? 

 

2言葉遣いがもたらす距離感

日本語では目上もしくは不慣れな人と話すときと、そうでないときとで全く違う話し方をします。その話し方が、相手と一定の距離感を生みます。

 

例えば、私がAさんと敬語で話すことに慣れたとします。そうすると、Aさんに敬語を使わないで、くだけた口調で話をしようと思っても想像以上に難しいものです。

一旦そうなると、Aさんがどんなに親しみやすい人であっても、私とAさんの間には取り去ることができない一定の距離感が生まれます。

 

ところで、私はゴリくんとなるべく中国語で会話をするようにしていますね。
ニュース番組を見て学習したゴリくんの日本語はくだけた感じが一切なく、私がゴリくんに距離感を感じてしまうからです。

 

中国語も目上の人に対する言い回しはありますが、丁寧な二人称以外はあまり日常的に用いません。特定の相手にずっと丁寧語や敬語で話すこともありません。

 

敬語や丁寧語を使うだけで、相手に距離感を感じる感覚がわかりずらいと、ゴリくんは言います。しかしゴリくんの話す日本語が、知らず知らずのうちに周囲の日本人に距離感を与えているのです。

 

 

また、ゴリくんは上下関係が理由で、相手に距離感を感じたことは1度も無いと言っていましたね。

 

では、ゴリくんが指導している学生たちはどうでしょうか。

ポスドクと学生の身分の違い
・年齢の差がある
・ゴリくんが研究室に所属している期間が学生より長い

このような理由から、ゴリくんとの間に上下関係に伴う距離感を感じています。それに堅苦しい日本語会話が加わることで、ゴリくんに更なる距離感を感じています。

 

その距離感は、ゴリくんが想像しているよりも、はるかに大きいものです。

学生たちは、「距離感のある人」であるゴリくんが全力で自分のサポートをすることに、疑問すら持っていたかもしれません。

 

 

ゴリくんが困っているのを見て、なぜ学生たちは

それはあなたの問題だから自分とは関係ないです。と言ったのか。

 

事実、彼らには関係が無いことだからです。

 

学生たちにとってゴリくんは、悩みを共有するほど親近感を持てる相手ではないのです。

 

まとめ

ゴリくん、これからの生活において以下のことを意識してみてください。

 

・教授などの目上の人はどのような人を評価する傾向にあるのか

・上下関係において日本人は互いにどのような言葉を使い、どのような距離感を感じているか

 

ゴリくんと同じ悩みを持つ人の心が軽くなれば幸いです。

 

この記事を書いている人

東京で獣医師をしているNanaといいます。
両親は台湾出身、夫は中国人です。

 

日本に興味を持つ人、日本に住んでいる人が新たな発見をできるような「独自のモノづくり」を目指し、文章を書いています。